株式会社Tの例
祖父の代から3代続いてきた業歴40年の建設工事業。
東京の下町で、大手ハウスメーカーの下請け工事を請け負っている社員6名の小規模企業です。
一向に景気が上向かない中、これといった対策も打ち出せず、5年前から収益が漸減し続けていました。
「今が耐え時!頑張っていればそのうちきっと良くなる・・」
という社長の希望的観測で元請けからの値下げ要請を安易に受け入れ、それなりに忙しいものの手元資金が常に不足し、経理担当の奥様と衝突する毎日でした。
しばらくは個人金融資産を取り崩したり、法人契約の生命保険を払済保険に変更するなどして資金手当てしていましたが、徐々に借入金が増加し、資金繰りの問題が顕著になってきました。
「もう会社を閉じるしかないのか・・」
「でも今止めたら借金だけが残るので、個人破産も覚悟しないといけないし・・」
「家族や社員の生活のことを考えると、止めるに止められない・・」
「自分の代で会社を潰したくない。何とか生き残る方法はないだろうか?・・」
そんな悶々とした日々が続き、思い悩み、元気がなくなる社長。
見るに見かねた奥様が、社長を伴って当社に相談に来られました。
当社では、こうした窮境状態を脱するため、ます決算書をビジュアル化して数字に疎い社長に自社の財務状態を理解してもらいました。
次にどんぶり経営からの脱却を図るため、管理会計制度を導入し、工事別・顧客別の原価管理を徹底指導しました。
これにより自社の収益力の源泉となる強みは、「同業他社がやりたがらない高い技術力を要する工事に応えられること」であることが判明し、従来の元請け重視の売上拡大志向を止め、小規模工事でも確実に利益の出る工事のみを受注する利益志向の経営方針に転換することにしました。
そして経営方針と計数計画、行動計画を経営改善計画書に記して金融機関に提出し、その後定期的に試算表や資金繰り表等を提出することを約すことで、借入金のリスケジュールに成功しました。
当社の新しい方針を聞いた元請会社は始め、取引縮小など厳しい圧力をかけてきましたが、次第に当社の技術力が他社よりも高いものであることを認識するようになりました。
それに応じて当社の価格交渉力が向上し、是々非々で仕事の受注を選択することができるようになり、収益や資金繰り状況を改善することができました。
下請け体質から脱出することができたのです。
「この前、久しぶりに社員に賞与を支給することができ、とても喜んでもらえました。来月は、夫婦でのんびり国内旅行に行ってきます!」と報告に訪れた社長夫妻の笑顔がとても印象的でした。